山下省[ヤマシタ ショウ]22歳。学習塾講師。
これはフィクションってことにしておく。
いつも通りの平日の昼間、山下は塾でその日の授業の準備をしていた。
急に自動ドアが開いた。
昼間の時間は、大体は飛び込み営業か、保護者の方のことが多い。
しかし、そこに立っていたのは、目に涙を溜めた女子生徒だった。
どうしたんだ?平日の昼間だ。学校に行っているはずだろう。
その女子生徒(少し問題を抱えていた)が、泣きながら言った。
先生に叱られて、学校から飛び出して来てしまったのだという。
先生たちから目を付けられていたその生徒は、頭ごなしに叱られると反発してしまう性格だった。
性格というより、そういう難しい時期であった。
平日の昼間だし、少し事情を聞いて学校に戻るように伝えた。
彼女は渋ったので、山下が一緒に学校に行くことにした。
学校まで送り届けると、先生も校門まで出てきていて、その生徒を探していたようだ。
山下は「少し話はできますか?」と若い担任の先生に言った。
すると、奥からベテランの体格の良い学年主任の先生が出てきて、話ができた。
「差し出がましいですが、、、
なんでも厳しく叱れば良いわけではなく、この子の性格を考えて叱ってあげて欲しいんです。」
そして
「過去を見ずに今の彼女をみてほしい」
と学校に伝えた。
学年主任の先生は
「あなたは塾の先生という商売だからねぇ」と言い放った。
目も合わさずに。
これに、山下はプチンと切れた。
「おい、俺は塾の先生として話をしてねぇよ」
山下は自分の渡した名刺を返せと言って取り上げ、目の前で破ったのだった。
「一人の生徒が一生懸命立ち直ろうとしているんだから、もう少しだけ繊細に接してあげてもらえませんか。今が大切なところなんです。先生だってそれくらい感じるでしょう?」
学年主任の先生は山下の気迫に驚いた。
そして、少し黙ったあと、ゆっくりうなずいた。
22歳のまだ一見大学生にも見えるくらい若い男に、50歳近いベテランの学年主任の男が圧倒されたのだった。
「塾でもこんなに熱い先生がいるんだね」と言った。
最後は山下に握手を求め、学校と塾とが協力してこの地域を良くして行こう、と言った。
塾でもこんな熱い先生?
当然だった。
山下は「学習塾」というカテゴリーが好きではない。
彼の塾は、成績だけ上げれば良い、勉強だけ教えていれば良いとは考えていない。
勉強はたまたま必要だから教えているだけ。
勉強、成績アップ、受験、その過程で人生で大切なことを学べるんだ。
それらを通して、生徒に問うのは
「なぜ頑張るか、なぜ学ぶか、どう生きるか」
生徒数は200名近くなったが、目の前の一人の生徒を何よりも大切にしている。
それが落ちこぼれとレッテルを貼られた生徒でも、偏差値70以上の生徒会長でも、上下の差は無い。
どんな生徒でもそれぞれの悩みや問題を抱えている。
それに真摯に向き合って行こう。
これが若い山下の覚悟だった。
ーーーーーーーー以上はフィクションです(ってことにしておきます)。笑
この時に、学校サボったり先生に反発していた、この女子生徒が、今は自分なりの夢を持ち、いきいきと頑張っていると聞く。
うれしい限りだ。
これが教育学習塾グループの原点だ。
それを忘れたら「普通の塾」になってしまう。
それでは俺たちが塾をやる意味がない。
もちろん、塾には優等生に見える学年1位の生徒も何人もいる。
しかし、そんな生徒たちでさえも、誰にも言えない悩みや問題を抱えていることもある。
俺たちは、学習塾という立場でも、教育者としての責任を強く持ち、彼らに寄り添っていく。
※「教育」って、子どもや親を自分の好みに洗脳?することだと思っちゃう人も多いんだと思う。
俺は「教育」ってのは、子どもに寄り添って、環境を整えて、気付かせてあげて、自分で歩いていくようにしてあげること?
なんだかモヤモヤしていますが。