前回のがこちら。
僕は今、在籍生徒800名近くになる、教育学習塾塾グループの代表をやっている。
かれこれ17年前のこと。学生の僕は、初めて生徒の前に立った。
その日の日記を、文章を書き加え、フィクションにしました。
塾の先生ってのは、こんな頭の中身で授業をしているのか、の「一部」を感じていただけたら嬉しいです。
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「みんなとは初対面だな! 何か先生に質問はないか?」
「先生!あ、間違えた、『エロキ』、きょうだいいる?」
「先生で間違ってねーよ!!おー、きょうだいいるぞ!超凶暴な兄貴と、10歳も上の姉がいる。俺は末っ子だ。」
「私もお兄ちゃんいる。ウザい。いらないよね~」
と元気な女子が言ってくれた。
「お!俺も中学時代は兄貴いらないって思っていたよ!今では仲良いけど、あの頃は毎日ケンカ。あのね、みんなが想像するケンカじゃないぞ、もう、殺し合いだぜ」
「え~!うそ~!」
「本当だよ!一緒に食卓でご飯食べていても、ヒジが当たったという理由で殺し合いのケンカ。自分の領域を決めて、線を引いて、お互いが入ったら殺し合いのケンカ。もう、国同士の戦争と一緒だよ。空中でも入ったらケンカだもんな。殺し合いの。」
「すげ~。エロキも結構ケンカ強そうだけど、お兄ちゃんも強いの?」
「そりゃそうだよ。兄貴は地元じゃ有名な暴走族のリーダーやっていたんだよ。暴走族同志の抗争事件で少年院にまで入ってんだよ」
「え、マジ?こえー」
「いや、面白い話があってな、その抗争事件の裁判があってさ、母親が見に行ったんだけど、兄貴の前にたくさんの仲間がすでに警察に捕まっていて、先に調書など取られてて、
『川上は武器は絶対に使わない主義だった』と全員が言っていて、罪も軽くなるかな~って思われていたんだけど、
裁判のとき、裁判官が『川上くん、右腕をまくって見せてみてください』と、兄貴はなんだ?と思いながら腕をまくると『異常なほどに太い右腕を凶器と同等とみなします』と言われたらしいんだよ。前代未聞だよな」
俺は腕をまくってみせ、
「兄貴は俺よりこんなに太いんだぜ!もう丸太!」
と言いながら大げさにしてみた。
その後も兄貴とのエピソードをいくつか話し、大爆笑であった。
この10分で生徒たちの心は完全に掴んだ。
このときは初めてではあったが、現場で11年先生をやった今だから分析できるが、この10分間のツカミの時間がそのあとの生徒たちとの関係に大きく影響するほど物凄い価値のある時間であるのだ。
「先生、なんで、金髪なの?そんなんでいいの?」
もう一つ質問が出た。
「3年B組!キンパツ先生!って言いたくてな。」
「なにそれ。先生なのに、金髪で、いいの?」
生徒から言われて改めて思ったが、塾長はこんな俺の髪を黒に戻せなどと言わなかった。その非常識さが、この塾の特徴なのだ。
現に、この瞬間も隣の教室では生徒たちの大爆笑が聞こえる。
非常識だ。笑
これがうちの塾の凄さなのだ。
「お!こんな時間か!」わざとらしく腕時計を見た俺は言った。
「授業入らないとな!最後の質問だれか?」
「先生はなんで先生になったの?」とまた裕太からの質問。
この質問には、一言で答えることは無理だった。どこから話そうか。
小学校の頃、運動会のとき勝手に遊んでいたら、ガタイの良い先生から首をシメられ、恐怖を覚えて、こんなのが教育か?と思ったことか。
小6のとき髪の毛をつかまれ首を絞められたんですよ - エイメイ学院・明成個別・女子専用Elena個別・EIMEI予備校 [教育学習塾グループ川上大樹]
※こちらの記事に詳しく。
いや、中学1年のとき、兄貴の友達からもらったボンタンをはいて登校したときに生活指導の先生に呼び出され「お前は、みんなへの影響が大きい。リーダーになれる。お前は自覚をして、その力を正しい方向へ使うべきだ」と言われたことか。
でも、中学3年で、この塾「エイメイ」に入って、尊敬できる大人に初めて出会って、俺は先生を本気で志したんだ。
その話を生徒たちにしてあげよう。
でも、そこからは簡単ではなかった。という話も生徒たちにはセットで話をしたい。
が、今日はさすがに勉強に入らなくてはならない。
「この話は今度にしよう!楽しみにしてろ!」
そういってから、自然な流れで数学の授業に入っていった。
この無駄話?のおかげで、生徒の授業への集中力は1.5倍だ。
つづく・・・