10年以上前、僕が現場にいるときのこと。
授業前に生徒から電話。
「僕、塾やめます。」
びっくりしましたが、すぐに事情を察しました。
実はこの生徒の保護者とは先月に面談をしたばかり。
お母さんからいろいろ相談は受けていました。
理由を聞く前に「お母さん近くにいる?」と。
お母さんと話してみることにしました。
「○○くん、またなんかやっちゃいました?」
「実は、約束を破ったんです。学校でもしっかりできなみたいで、、勉強に行くと言ってどこかで遊んでいたり。。でも塾は辞めたくないっていっているんですけど父親が怒ってしまって。」
「そうですか。一度彼と話がしたいんですけど、チャンスをくれませんか?
もし、お母様がうちの塾だとダメだと判断されたとしたら、残念ですが引き留めませんけど。」
「いいえ。いろいろなお母さん方からそちらの塾が良いということを聞いて決めたんで、それはありません。
主人ともここに決めてよかったな。と話していたんですが・・・・」
「ありがとうございます。じゃあ、今日塾に早めに来させてください。僕が話をしてみます。」
すぐに彼が到着
「お前、塾辞めたいの??」
「辞めたくない。」
「そうか。お母さんとの約束破っちゃったのか?」
「うん。・・・・・・」
「お前はこのままでいいと思っているのか?」
「・・・・・・いや、だめだと思う。」
「来年高校受験だけど、想像できるか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「はっきり言うぞ、お前はとても弱い。
いろいろなことからすぐに逃げ出してしまう。
例えば塾でも宿題を忘れたら怒られるのが嫌だから仮病で休む。
部活に遅刻をしてしまったら休んでしまう。
勉強もわからないとすぐに投げ出す。」
「・・・・・・・・」
「人間はもともと弱いものだから、一度逃げてしまうと次も辛いことがあったら逃げ道を探してしまう。
いろんな事には探せば逃げ道が見つかってしまう。
でも、友達をみてみろ。
みんなつらくてもがんばっているだろ?
みんなどうどうと正面から勝負しているだろう。
お前はどうだ?いつまでも逃げてはいられないんだぜ。
お前はずっと親からお小遣いをもらって生きていくのか?
この社会で生きていくためには働かなければいけない。本当に辛いぞ。
それまで逃げてしまうようなかっこわるい人間になってほしくない。
今のお前はそっちに向いてしまっている。
だからお母さんも心配なんだよ。」
「・・・・・・・・」
「お母さんが塾辞めろといった気持ち考えたことあるのか?」
「・・・・・・・・」
彼は、少し目に涙を浮かべる
「どうどうと勝負しろよ。
宿題わすれたらどうどうと怒られろ!!
逃げるな!
遅刻してしまったら謝れ!
そして次はしない。と考えろ!」
「はい。」
「俺と二つだけ約束しよう。」
「・・・・・・・・」
「親には今後嘘はつかないこと。」
「はい。」
「親ダマしてどうすんだよ。世界中でお前のことをここまで考えてくれる人はいないぞ。そんな大切な人欺いてどうすんだよ。」
「はい。」
「次、親に嘘をつくときは、親を守るための嘘か、優しさで嘘をつけ。だますようなことは二度としてはいけない。」
「はい。」
「もう一つ。辛いことから逃げるな!」
「はい!!」
「お前、塾は好きか?」
「はい。絶対辞めたくない。」
「辛いことも経験していくと、もっと楽しくなるよ。これからもっともっと楽しくなるから、お前は塾辞めたらいけない。今日帰ったら、お父さん、お母さんに謝って話をしなさい。」
「はい。」
握手をする。
「お前は今日から変われ!
俺は今日のことをずっと覚えている。
お前が今日からかっこよくなったってな」
「はい。ありがとうございます。」
「じゃあ、がんばろうぜ!」
授業後にお母さんに電話。
経緯を話すと、お母さんも安心してくれました。
うちの塾では毎日、こんなドラマがあります。